東京の湾岸部や埋立地で建築を計画する際、液状化調査の結果は施主への説明や地盤改良会社の見積比較を行う土台になります。調査で分かることや標準的な手順を解説します。
液状化調査とは、地震の揺れによって地盤が液体のように流動化する「液状化現象」が発生する可能性を、地形資料や現地でのボーリング調査・土質試験などを通じて評価する調査です。
東京湾岸部や埋立地、河川沿いの低地で建築を計画する際は、通常の地盤調査に加えてこの液状化調査を実施することで、施主への安全性の説明や地盤改良工事の要否判断に役立つ客観的な根拠を得ることができます。
液状化は、地下水位が高く、緩く(締め固められていない)砂質土で構成された地盤が、強い地震動を繰り返し受けることで発生します。
平常時は砂粒子同士が結びつき、隙間の水も安定していますが、強い揺れによって粒子間の水圧が急激に上昇すると、砂粒子の結びつきがバラバラになり、地盤全体が液体状になって建物を支える強度を失います。
その結果、建物の沈下や傾斜、道路の波打ちなどの被害につながります。
液状化調査を実施すると、敷地の地盤が実際に液状化するリスクをどの程度持っているかを、数値として把握できます。
代表的な指標が「FL値」(液状化に対する安全率)で、1.0を超えれば液状化の可能性は低く、1.0以下であれば液状化の可能性があると判断されます。
FL値は地表から深さ1メートルごとに算出され、深さ方向に重みを付けて合計することで、地盤全体としての危険度を示す「PL値」(液状化指数)を求めることができます。さらに、液状化が発生した場合に地表面がどの程度変位するかを示す「Dcy値」も併せて算出されます。
これらは平成25年4月1日付で国土交通省都市局が発表した「宅地の液状化被害可能性判定に係る技術指針」による建築H1-Dcy法に基づき、マグニチュード7.5、最大加速度200gal程度の中地震を想定して判定するのが一般的です。
引用元:ジャパンホームシールド株式会社「液状化調査」(https://service.j-shield.co.jp/jiban/liquefaction)
東京都大田区「液状化の可能性を調査する方法」(https://www.city.ota.tokyo.jp/seikatsu/sumaimachinami/kenchiku/ekijyoukataisaku/ekijoukataisaku04.html)
液状化は、埋立地などの人工造成地盤や、比較的新しい沖積層で特に発生しやすいとされています。
実際に2011年の東日本大震災では、千葉県浦安市の中町・新町地区(埋立て地盤)でほぼ全域にわたり液状化現象が発生し、戸建住宅など約3,700棟の建築物が1/100以上の傾きにより半壊以上の被害認定を受けました。
噴出した土砂は7万5千立方メートルに及び、上下水道や道路など公共施設にも大きな被害が生じています。
参照元:浦安市「東日本大震災-浦安市の記録-」(https://www.city.urayasu.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/034/330/1-4.pdf)
国土交通省がまとめた地形区分による液状化発生傾向の指針でも、埋立地・旧河道・砂丘間低地・自然堤防縁辺部などは液状化可能性が高い地形とされる一方、扇状地や砂丘などは可能性が低いとされています。
東京湾岸エリアや河川沿いの低地で建築を計画する場合は、この地形区分を踏まえたうえで液状化調査の実施を検討することが重要です。
参照元:東京都大田区「液状化の可能性を調査する方法」表1 地形からみた判定指針(https://www.city.ota.tokyo.jp/seikatsu/sumaimachinami/kenchiku/ekijyoukataisaku/ekijoukataisaku04.html)
東京都建設局(公益財団法人東京都道路整備保全公社が運営)が公開している「東京の液状化予測図」(令和7年度改訂版)では、都内全域を一律の強さで揺らした場合の液状化の可能性を相対的に示しています。
ただし、この予測図はあくまで目安であり、特定の地震に対する予測でも、個々の敷地の安全性を保証するものでもありません。判定は250メートル四方のメッシュ単位で行われているため、同一メッシュ内でも場所によって実際のリスクは異なる場合があります。
土地や建物の取引・建築において液状化判定を行う場合、自らの責任で現地の詳細な調査を行う必要があるとされています。
引用元:東京都建設局「東京の液状化予測図 令和7年度改訂版 利用上の注意」(https://doboku.metro.tokyo.lg.jp/start/03-jyouhou/ekijyouka/top.aspx)
平成13年7月2日に国土交通省が発出した告示第1113号「地盤の許容応力度及び基礎ぐいの許容支持力を求めるための方法等を定める件」では、液状化のおそれのある地盤の場合、所定の構造計算を行う場合に限り地盤の許容応力度を定める方法を使用できると定められています。
また、液状化のおそれがある地盤とは、概ね「地表から20メートル以内の深さにある」「砂質土で粒径が比較的均一な中粒砂等からなる」「地下水で飽和している」「N値が概ね15以下である」という4条件すべてに該当する砂質地盤を指すとされています。
中規模以上の建築物や重要建築物では、構造計算の精度を高めるためにこうした条件に照らした液状化調査が重要な意味を持ちます。
引用元:住まいの安心研究所「土地の液状化判定はなぜ必要?2つの判定方法と判定後の液状化対策工法」(https://sumaken.j-shield.co.jp/ground-and-house/ground-survey-liquefaction-countermeasure.html)
アルキテック株式会社「液状化対象層の判定基準と地盤調査指示のポイント」(https://arkhitek.co.jp/jiban-sekkei-liquidation/10851/)
液状化調査はまず「一次判定」として、新旧の地形図や土地条件図、地盤調査データベース、液状化予測図といった既存資料に基づき、対象地が液状化しやすい地形に該当するかを確認するところから始まります。
過去に液状化が発生した履歴がある地盤は、浅部について再び液状化が起こる可能性があるとされているため、履歴の有無も重要な判断材料になります。
この一次判定で大地震の際に被害が生じる可能性があると判断された場合に、現地でのボーリング調査などによる二次判定へと進みます。
二次判定で最も精度の高い調査方法とされるのが、ボーリング調査と標準貫入試験(SPT)です。直径7~12センチメートル程度の孔を地中に掘削してコア状の土の試料を採取し、地層の構成や土質の状況を調べます。
あわせて、約63.5キログラムのおもりを76センチメートルの高さから自然落下させ、サンプラーを30センチメートル地中にめり込ませるのに要する打撃回数(N値)を測定することで、土の締まり具合を確認します。
実務では、支持層を確認する基準として「N値50以上が連続で5.0メートル以上」を指示するケースが一般的です。マンションなど杭基礎の支持層確認が必要な建物でよく用いられる調査方法で、正確な調査ができる反面、費用や調査期間はかかります。
引用元:東京都大田区「液状化の可能性を調査する方法」(https://www.city.ota.tokyo.jp/seikatsu/sumaimachinami/kenchiku/ekijyoukataisaku/ekijoukataisaku04.html)
アルキテック株式会社「液状化対象層の判定基準と地盤調査指示のポイント」(https://arkhitek.co.jp/jiban-sekkei-liquidation/10851/)
ボーリング調査などで採取した土の試料は、試験機関に持ち込んで室内土質試験にかけ、土の判別や強度を詳細に調べます。
液状化の可能性を判定するうえでは、粒の大きさごとの分布を示す「粒度試験」や、砂に含まれる細かい粒子の割合を示す「細粒分含有率試験」の実施が欠かせません。
実務では、液状化対象層のすべてにおいてこれらの試験を実施するよう、地盤調査会社に具体的に指示することが望ましいとされています。あわせて軟弱層に対する圧密試験なども行っておくと、将来的な地盤改良の検討にも役立ちます。
ボーリング調査や室内土質試験で得られたデータをもとに、いよいよ液状化判定の計算を行います。
実務では、砂層について150galと200galの2条件で検討を行うよう指定するケースがあります。FL値が地表面から深さ1メートルごとに求められ、これを深さ方向に重み付けして合計することで地盤全体の危険度を示すPL値を算出。
また非液状化層厚と組み合わせることで地表変位量を示すDcy値が算出されるため、これらの数値をもとに液状化が建物や地表に与える影響の程度が総合的に判定されます。
引用元:ジャパンホームシールド株式会社「液状化調査」(https://service.j-shield.co.jp/jiban/liquefaction)
アルキテック株式会社「液状化対象層の判定基準と地盤調査指示のポイント」(https://arkhitek.co.jp/jiban-sekkei-liquidation/10851/)
液状化調査は、東京湾岸部や埋立地、河川沿いの低地で建築を計画する際に、施主への安全性の説明や地盤改良会社との見積比較を行うための客観的な根拠となります。
ハザードマップによる一次判定と、ボーリング調査・室内土質試験を組み合わせた二次判定を経て算出されるFL値・PL値・Dcy値を正しく理解し、案件に応じた適切な調査手法を選択することが重要です。
ここでは、「戸建て住宅」「マンション・アパート」「高層マンション」など建物の規模別に、おすすめの地盤改良・地盤補強会社を3社紹介。
施工条件が厳しい東京エリアに対応している会社を厳選しています。
幅広い工法提案力と小型施工機で
小規模建築に対応
コンパクト施工と高支持力な工法で
中規模建築に対応
高支持力・低騒音を両立した工法で
大規模建築に対応
※1 N値50の地盤条件下での比較において、押込み451.0〜2,521.0kN、引抜き459.8〜1,923.9kNの支持力。中規模建築にも対応を検討しやすい支持力水準です。
支持力は地盤条件や設計条件などにより異なります。
参照元:報国エンジニアリング公式HPより(https://www.hokoku-eng.jp/ground-improvement.html)
※2 参照元:報国エンジニアリング公式HP(https://www.hokoku-eng.jp/ground-improvement.html)
※3 先端地盤が砂質土・礫質土で、拡大掘削倍率ω=2.00、先端平均N値50、節部径φ1200の条件において、最大約16,000kN級の先端支持力。
大規模建築にも対応を検討しやすい支持力水準です。支持力は地盤条件や設計条件などにより異なります。
参照元:ジャパンパイル公式HP(https://www.japanpile.co.jp/method/pdf/hyper-mega.pdf)